2015年1月27日
20年ほど前、合唱を楽しんでいた頃、ボイストレーナーの先生に勧められて和声オペラのオーディションを受け、たった一人声楽の素人なのに舞台に立った。歌に対する情熱が与えられトレーニングに励んだが、どうしても細く高い自分の声を太くすることが出来ずに行き悩み、ある音域になると声が出ない。するとある女性がわたしが発声を見ましょうと申し出て下さり、また歌えるようになりますよと丁寧に指導して下さった。実はその方は乳癌手術後で骨転移もあり、辛い時期であったことを後に知ることになるのだが、その方のおかげで声が出るようになった。半年後にその方は52歳で召された。前後して、看護学校時代の友人からまたあなたの歌が聴きたいといわれており、声帯を痛めて最近は讃美歌くらいしか歌っていないことを伝えるとそれでもとても喜んでくれた。癌末期なのに再び歌えるようにと最後の時間をわたしのために使ってくださった人、わたしの歌が聴きたいと言ってくれた友人、人の評価を気にせずに喜ばれるような歌をうたいたいと思わされた。当時教会で病気であった方々が思い浮かび、彼女たちの愛唱讃美歌を届けようと2001年6月15日と7月5日に教会で録音したものを30枚ほどCDにしてお届けした。決して上手ではなく、聴きなおすと気になるのだが、わたしにとっては歌う喜びを与えられた一大事であった。それから10数年たった今年の春、思いがけずそのCDを毎晩聴いており、薬を飲まずに眠れて助かっている。でも磨り減って聴けなくなってしまったのでまた薬を飲み始めたと聞いて驚いた。どうも牧師がコピーしてその方に差し上げていたらしい。わたし自身今では聴くこともないCDがこんな形で用いられていたことに驚き、主の計らい、用いられる喜びを深く謝した。(文 よ)